グアテマラの満月レイブで男二人にナンパされるという怒涛の旅を続けていた僕。
「もうしばらく刺激的なイベントはお腹いっぱいだな……」
そう思いながらアティトラン湖のほとりにある宿でぼーっとしていると、居心地が良くて延泊し続けているアルゼンチン人のディエゴと、カナダ人のルナが話しかけてきた。
「ヘイ、アミーゴ(友達)!なんだかお疲れモードだね。今日の夕方、ジャングルの奥で『テマスカル』をやるんだけど、一緒に行かない?魂の汚れが全部落ちて、すっきり生まれ変われるよ!」
カカオ、レイブの次は「テマスカル」。 また怪しげなスピリチュアル系か……と思いつつも、二人のキラキラした笑顔に押し切られ、参加してみることにした。
そもそも「テマスカル」ってなに?
ここで、初めて聞く人のために「テマスカル」について簡単に説明しよう。
テマスカルとは、古代マヤ文明の時代から中米に伝わる、伝統的な「聖なる蒸し風呂(サウナ)」のことです。
ただ汗をかくだけの日本のサウナとは違って、古代マヤ文明では神聖な儀式とされていた。土や石で作られたドーム状の建物を「お母さんのお腹(胎内)」に見立て、その中で熱い火山石にハーブ水をかけて猛烈な蒸気を浴びます。
暗闇の中で歌を歌ったり瞑想したりして、体の毒素だけでなく、心のモヤモヤまで全部吐き出して「新しく生まれ変わる」ための体験。
ただ汗をかいて「整う」のではない。一度ドームの中に入ったら、儀式が終わるまでは出られない。肉体と精神を極限まで追い詰め、一度疑似的に死を迎え、そこから「新生児」として外の世界(産道)へ這い出てくるという、スピリチュアル・デス・マッチなのである。
ジャングルの奥に現れた、謎の泥ドームとシャーマン
※写真厳禁なので、AI素材で説明していく

午後3時。ヒッピーたちに連れられてジャングルを進んでいくと、ひっそりとした平地に出た。
そこに建っていたのは、まさに写真で見た通りの、土と石でできた丸いドーム。看板には古びた文字で「TEMAZCAL」と書かれている。ドームのてっぺんからは白い煙がモクモクと出ていて、あたりには薪が燃える匂いと、独特なハーブの香りが漂っていた。
ドームの前にはカラフルな絨毯が敷かれ、バナナやオレンジ、謎の木の実、そして大きな貝殻が綺麗に並べられたお供え物の祭壇がある。
「よく来たね、我が兄弟たちよ」
現れたのは、腰に赤い布を巻いた現地グアテマラ人のシャーマン。

儀式が始まると、僕らはまず祭壇の前に座った。シャーマンが香木の煙を僕たちの体に浴びせ、お祈りを捧げる。ルナやディエゴが真剣な顔で地面に頭をつけて祈るのを見て、僕も真似して泥の地面に額をつけた。観光気分の軽い気持ちは消え、一気に不思議な緊張感に包まれる。
視界ゼロの暗黒サウナ!限界突破の熱気

「さあ、お腹の中へ戻りなさい」
シャーマンに誘導され、狭い入り口から這いつくばってドームの中へ入る。入り口に厚い布のカーテンが下ろされると、中は一瞬で完全な真っ暗闇になった。
ドームの中は大人10人が座るといっぱいで、中央にはカンカンに熱せられた火山石が山積みになっています。
「これから、大自然のパワーを体感していくよ」
シャーマンの言葉と同時に、真っ赤な石にハーブ水が一気にかけられました。
ジュウウウウウウウッ!!!
ものすごい音と一緒に、超高温のハーブの蒸気が暗闇の中に広がります。
「あっつーーーーい!!!」

心の中で叫んだ。日本のサウナなんて比じゃないレベルの熱風が襲ってきて、一瞬で全身から滝のように汗が吹き出る。呼吸をするだけで喉が焼けそうなイメージ。
さらにシャーマンが太鼓を叩き、不思議な歌を歌い始める。暗闇、猛烈な熱気、そして耳元で響く太鼓の重低音。ヒッピーたちはそれに合わせて大声を上げたり、歌ったりしている。
最初は「熱すぎる、早く出たい!」とパニックになりそうだったが、20分ほど経つと不思議な感覚になってきました。だんだんと熱さに慣れ、頭の中がすっきりとクリアになっていく。誰がどこにいるかも分からない暗闇の中で、自分の呼吸の音だけが聞こえる世界。余計な考え事がドロドロに溶けていくようでした。
限界の先へ。アティトラン湖へダイブ!
一度ドームの中に入ったら出られない。
時間が経つにつれ、「出してくれー!」と叫び声がドームの中に響き渡る。
しかし出ることは許されない。一度死んで生まれ変わる疑似体験をこのドームの中で行っているからだ。
体中の水分が出尽くし、心の中の邪念もすべて吐き出した頃、ようやく入り口の布が開けらた。
「さあ、新しい自分になって外へ出なさい」
夕暮れの心地いい光が差し込む中、僕たちは生まれたての赤ん坊のように、四つん這いになって泥のドームから這い出た。外の空気が驚くほどひんやりとしていて、ジャングルの緑がめちゃくちゃ鮮やかに見えた。
「アティトラン湖へ走れーーー!」
誰かの掛け声と一緒に、泥と汗にまみれたまま、みんなで近くの湖へとダッシュ。そのままザブーンと飛び込みました。
「うおおおお!最高すぎる……!!」
夕日に染まる火山を眺めながら湖にプカプカと浮いていると、全身の細胞が喜んでいるのが分かった。脳みその奥まで丸洗いされたような、今までに味わったことのない爽快感。
水面から顔を出したルナが、ニッコリ笑って言た。
「どう?生まれ変わった気分は?」
「最高。もう元の生活に戻れないかもしれないよ」
ただの泥サウナだと思って入ったテマスカル。それは、自然と一体になって自分をリセットできる、最高にディープな「心の洗濯機」だった。グアテマラの聖地、サン・マルコス村の奥深さに、すっかり魅了された一日になった。


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