メキシコという国は、本当にどうかしている。
エロい誘惑やマフィアの暴力があるかと思えば、何百年も前から伝わる神秘的なスピリチュアルの世界が当たり前に残っていたりする。僕たちが普段信じている「常識」なんてものは、この国に一歩足を踏み入れれば、何の意味も持たなくなってしまう。
僕がこれまで世界中を旅してきた中でも、メキシコが持っている濃縮されたエネルギーと「ぶっ飛び度」は、文句なしで世界トップクラスだ。
今回は、僕が実際に足を踏み入れ、頭と心が吹き飛ぶような衝撃を受けた「メキシコのぶっ飛んだ地域」を、ランキング形式で3つ紹介しようと思う。
難しい説明や小難しい言葉は一切抜きだ。僕が現地で体験したありのままの狂気と開放感を、リアルな熱量でお届けする。
【第3位】全裸の町「ジポリテ」〜服を着ている方が不審者になる楽園〜
第3位にランクインしたのは、オアハカ州の海岸沿いにある小さな海辺の村「ジポリテ(Zipolite)」だ。
ここはなんと、メキシコで唯一「公に全裸になることが許可されているビーチ」として知られている。世界中からヒッピーやヌーディストが集まってくる場所だ。
服を着ている僕が「変な人」になる世界
バスを降りてビーチに一歩足を踏み入れた瞬間、目の前に広がっていたのはあまりにも異常な光景だった。
砂浜でおしゃべりしている老夫婦も、売店でコーラを買っているお兄さんも、ヨガをしているお姉さんも、全員がすっぽんぽんの真っ裸なのだ。
日本では服を脱いで外を歩けば一発で逮捕されるが、ここでは全く逆。リュックを背負い、スニーカーを履き、海パンをはいている僕の方が「なんであの人、服なんて着てるの?」という不審な目で見られる。服を着ている人間の方が圧倒的マイノリティ(少数派)という、脳がバグる空間なのだ。

恥ずかしさの限界と、まさかのパニック
「郷に入っては郷に従え」ということで、僕も意を決して海パンを脱ぎ捨ててみた。
服という壁がなくなった瞬間、全身に海風が吹き抜けて、今まで味わったことのないような不思議な開放感が走った。「あ、これ最高かもしれない……」そう思っていた矢先、事件は起きた。
向こうからモデルみたいにスタイル抜群の真っ裸の美女たちが笑いながら歩いてきて、僕の目の前で「こんにちは!」と笑顔で挨拶をしてくれたのだ。
あまりの美しさと「お互いに全裸」という強烈な状況に、僕の脳みそは大パニック。心の中で「落ち着け!」と叫んだものの、僕の股間は正直にフル勃起してしまった。
恥ずかしすぎて死のうかと思ったが、美女たちは僕の反応を見てクスクス笑いながら言った。
「あら、立派ね! ここを楽しんでる証拠よ。気にしなくていいの、それが自然なんだから!」
ここでは、自分の身体が自然に反応してしまうことすらも、優しく包み込んで受け入れてくれるのだ。
欲望が渦巻く「愛の浜辺」で男たちに狙われる
だが、ジポリテの凄さはそれだけじゃない。
ビーチの端にある切り立った崖を越えた先に、「プラヤ・デル・アモール(愛の浜辺)」という隠れ家のような入り江がある。

「なんてロマンチックな名前なんだろう」と思って行ってみたら、そこは恋人の聖地などではなく、世界中から男たちが集まる超有名なハッテン場だった。
岩陰では筋肉ムキムキの男たちが堂々と絡み合っている。呆然と立ち尽くしていると、彫刻のような体をした男前たちに一瞬で囲まれ、クマみたいなマッチョ男に股間を触られそうになった。
「アジア人とやってみたいんだ。お前も一緒にどうだ?」
危険を察知した僕は「グラシアス(ありがとう)!」と叫びながら、全力で崖の階段を駆け上がって逃げ出した。
ジポリテが教えてくれたこと
夜、ビーチバーで元弁護士のマリアという女性が作るめちゃくちゃ美味いテキーラを飲みながら、僕は考えた。
僕たちは普段、「男らしくあれ」とか「ちゃんとした大人でいなきゃ」という見えない服を何枚も着込んで生きている。でも、ジポリテでは隠せるものが何もない。だらしない体型も、理性に反して立ってしまう股間も、むき出しの欲望も、全部「これが人間だろ?」と笑って許してくれる。
ジポリテは、自分の恥ずかしい部分も含めて全部好きになるという、最高の自由を教えてくれる場所だった。

【第2位】キノコ村「サンホセデルパシフィコ」〜自分がキノコだと気づいた日〜
第2位は、オアハカ州の激しい山道をバスで登った先にある、標高2500メートルの小さな村「サンホセデルパシフィコ」だ。
雲の中にすっぽりと包まれたこの村は、なんと「幻覚キノコの聖地」として世界中のヒッピーに知られている。昔からキノコが「自然の薬」として儀式に使われてきた歴史があり、村全体がキノコと共存している不思議なスポットだ。
雲の上の村で手に入れた「聖なるキノコ」
村に到着すると、あちこちから薪を燃やす良い匂いがして、カラフルなポンチョを着た旅人たちがゆったりと歩いていた。
僕は村で有名だという小さなショップに向かい、店主のお兄さんからキノコを買うことにした。乾燥させたものやハチミツ漬けもあったが、「雨季に採れた一番強いやつを冷凍してあるよ」と言われ、生に近いパワーを持つ「冷凍キノコ」を分けてもらった。

お兄さんは僕にこう言った。 「これはただの遊びじゃない。君がキノコを受け入れるんじゃない。キノコが君を受け入れてくれるんだ」
言葉の意味はよく分からなかったが、僕はハチミツを混ぜてキノコを全部平らげ、ホステルの裏にある深い森へと散歩に出かけた。
世界の解像度が上がり、森が話しかけてくる
食べてから1時間ほど経った頃、急に視界の様子が変わった。
木の葉っぱの一枚一枚が生き物みたいに呼吸を始め、木々の間から差し込む太陽の光が、金色の綺麗な糸みたいに空中に浮かんで見える。風が葉っぱを揺らす音や鳥のさえずりが、頭の中で心地よい音楽のように響き渡る。
「あ、森が笑っているな」
そんな感覚が、すんなりと胸に入ってきた。
「待てよ、僕たちはキノコなんじゃないか?」
さらに時間が経つと、もっと凄まじい体験がやってきた。
地面を見つめていると、土の中に張り巡らされた無数の光の糸が見えた。それは、すべての木や虫たちをつないでいるキノコの「根っこ(菌糸ネットワーク)」だ。
その光景を見た瞬間、僕の頭の中に稲妻のような衝撃が走った。
「待てよ……人間も、実は全員キノコなんじゃないか?」
何を言っているんだと思われるかもしれないが、その時の僕にはこれが「世界の真実」だと完璧に理解できたのだ。
土の中に広がる巨大な菌糸のネットワークこそが、この世界の本体だ。そして、たまに地面からひょっこり顔を出すキノコが、僕たち人間一人ひとりなのだ。
僕たちは「自分は独立した一個の人間だ」と思って生きている。でも本当は、大きな一つの命からポコっと外に飛び出しているだけの存在に過ぎない。隣のキノコを羨んだり、他人と争ったりすることなんて、最初から意味がなかったのだ。みんな同じ根っこから生まれた、一つの大きな命なのだから。
自分自身がキノコになって世界とつながるという、ぶっ飛びすぎているけれど温かい体験が、ここにはあった。

第1位:神のサボテンが眠る砂漠「レアル・デ・カトルセ」〜宇宙とつながるペヨーテの旅〜
堂々の第1位は、メキシコ中央部に広がる広大な砂漠地帯の街「レアル・デ・カトルセ」だ。
かつて銀の採掘で栄えたこの街は、長いトンネルを抜けた先にある石造りのゴーストタウンだ。そしてこの街の背後に広がる「ウィリクタ」と呼ばれる砂漠は、先住民ウィチョル族が何百年も前から巡礼に訪れる聖地であり、「宇宙と交信できる神のサボテン・ペヨーテ」が眠る場所でもある。

砂漠での宝探しと、地獄の苦味
現地ガイドのホセと一緒に、ボロボロのジープに乗って砂漠へ向かった。 広大な茶色の大地を這いつくばるようにして探し、ついに発見した。トゲがなく、平べったいボタンのような緑色のサボテン。これがペヨーテだ。

大地の神様にタバコの煙を吹きかけて感謝を捧げてから、ナイフでカットする。中から出てくる粘り気のある白い汁ごと、口の中に放り込んだ。
……これが、ありえないほど苦い。 噛めば噛むほど猛烈な吐き気が襲ってくる。ホセの「飲み込め、それが浄化だ」という言葉を信じ、必死の思いで胃の中に流し込んだ。
胃の中をブチまけた後に訪れた「万華鏡の世界」
食べて1時間後、激しい吐き気に耐え切れず、僕は砂の上にひざまずいて胃の中のものをすべてブチまけた。
しかし、吐ききった瞬間、さっきまでの体の重さが嘘みたいに消え去り、意識が急猛スピードで加速し始めた。
目の前の景色が一変する。岩の表面が生き物みたいに膨らんだり沈んだりして呼吸を始め、足元の砂の一粒一粒がダイヤモンドのようにキラキラと輝き出した。
目を閉じると、マヤやアステカの幾何学模様みたいな鮮やかなパターンが、ハイビジョン映像以上の解像度で脳内に直接流れ込んでくる。
さらに時間の感覚は完全におかしくなった。1秒が永遠のように感じられ、風が吹くとその音が「色」になって見えた。音が見えて、色が聞こえる。五感がぐちゃぐちゃに混ざり合っていく。
「全部、つながっているんだ」
太陽の熱風に溶かされ、自分という人間の境界線が完全になくなっていった。 砂漠の大地、空を飛ぶ鳥、吹き抜ける風、そして僕。全部が混ざり合って一つになった感覚。
その時、頭の中にスッと答えが浮かんできた。
「ああ、全部つながっているんだ」
普段なら「スピリチュアルすぎて笑える」と切り捨てるような言葉が、この時は心の底からリアルな事実として理解できた。
東京でせかせか働いていた自分も、欲望にまみれて遊んでいた自分も、全部この大きな宇宙の流れの中にある小さなゴミみたいなものだ。そう思ったら、肩の荷がスッと下りて、なんだか猛烈に心が楽になった。
僕は砂の上に大の字になって寝転び、この世界があまりにも美しくできていることに感動して、ただただ涙を流しながら「ありがとう」と感謝していた。
夜になり、焚き火を囲みながらホセが言った。 「ここで見たものは、ここだけの秘密にしておけ。ここは神様の場所だ。でも、街に戻れば現実が待っている」
ペヨーテが見せてくれたのは、現実の悩みやちっぽけなプライドを吹き飛ばす、あまりにも壮大な宇宙の答えだった。
旅を終えて:メキシコという国の本当の姿
メキシコのぶっ飛んだ地域ランキング、いかがだっただろうか。
この国には、生々しいエロやバイオレンスといった「陰」の部分と、圧倒的な生命力や神秘的なスピリチュアルという「陽」の部分が、めちゃくちゃに混ざり合って存在している。
だからこそ、メキシコに行くと自分が今まで大事に抱え込んでいた「くだらないこだわり」や「ちっぽけな悩み」が、一瞬でどうでもよくなってしまうのだ。
もしあなたが今の日常に息苦しさを感じているなら、ぜひメキシコへ飛んでみてほしい。
常識を綺麗さっぱり脱ぎ捨てて、新しい自分に生まれ変わる体験が、そこには待っているはずだ。





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