この中米の旅では、よく全裸と出会う(どういう事、笑)。今までの全裸の概念が覆るほどの経験を既にしてきたが、まさかコスタリカで、史上最強に良い意味で狂ったホステルに出会うとは思わなかった。全裸になるのが好きな人には、とても面白く、恐らく地球上で、こんなユニークな場所で全裸の人たちと交流できる場所はないと思うので、ぜひこのホステルへ行くのをおすすめする。そのホステルの名は「Bolita Hostel」。いかに狂ったホステルか紹介していこう。
世界最後の秘境?コルコバード国立公園にあるホステル
コスタリカ南西部に位置する「コルコバード国立公園」。ナショナルジオグラフィック誌によると「地球上で最も生物学的に豊かな場所」と言われている、まさに熱帯雨林のラスボス的存在だ。地球上の全生物種の約5%がこの狭い地域に集中しており、ジャガーや真っ赤なウインコ、珍しいナマケモノまで、歩けば動物にぶち当たる生きた生態系博物館である。
僕はこのコスタリカ旅の最大のハイライトとして、コルコバードのジャングルを探検するためにやってきた。多種多様な野生動物や植物を思う存分撮影し、大自然に抱かれる1週間。そのためには、公園の拠点となる安宿が必要だった。
「ん? なんだこの宿……格安なのに評価がやたら高いな」
Google mapで見つけたそのホステルは、コルコバード国立公園の目と鼻の先、というかほぼ敷地の境界線上に位置していた。レビューには「自然との究極の調和」「人生観が変わる」「最高の解放感」といったエモーショナルな言葉が並んでいる。旅人の直感が「ここには何かがある」と告げていた。僕は迷わず1週間分のベッドを予約した。
汗だくの1時間登山、そして現れた「全裸の楽園」
ホステルまでは、文明の道路など存在しない。川を横切り、巨大なシダ植物が茂るジャングルの中を、重いバックパックを背負ってひたすら歩く。

湿度は100%近く、立っているだけで全身から汗が噴き出す。ホステルにたどり着くまでが、ハード過ぎた。
「本当にこんなジャングルの奥に宿なんてあるのか……?」
約1時間ほど歩き続けたその時、木造のオープンエアな建物が姿を現した。

「着いた……! 命拾いした……!」
疲労困憊で汗まみれの僕は、バックパックを床に下ろした。そして、レセプションと思しきカウンターへ視線を向けた瞬間、思考が完全にフリーズした。
「ヘイ!アミーゴ!ようこそ、我が家へ!」
満面の笑顔で僕を迎えてくれたスタッフの男性。小麦色に焼けた肌、そして……完全に何も着ていない。帽子も、靴下すらも履いていない。素っ裸である。
「え……?」
僕が声を失っていると、奥の共同キッチンから賑やかな笑い声が聞こえてきた。そっと目をやると、10人ほどの男女のバックパッカーたちが仲良く夕食の準備をしている。パスタを茹でる男、トマトを刻む女、ビールを飲む男。全員、見事なまでに全裸。このホステルには、服を着ている人がいない。
男女構わず、全員が生まれたままの姿で平然と会話をし、野菜を切り、笑っているのだ。目のやり場どころの話ではない。視界のどこを切り取っても、ダイレクトに生々しい人間本来の姿しか飛び込んでこない。
「え? どういう事???」
僕の思考は完全にフリーズしていた。
地球上で最もカオスな「全裸OK」のルール
混乱する僕をよそに、全裸のスタッフは親切に館内を案内してくれた。
話を聞くと、ここは世界のヌーディスト(ナチュラル主義者)たちの間では超超超有名な伝説のホステルらしい。ここでは服を着る・着ないは完全に個人の自由。そして最大の狂気はこれだ。
「ホステルの敷地内はもちろん、この周りの国立公園のジャングルの中まで全裸で散策OK」
……正気か??
「僕らは自然の一部だからね。服という人工物を脱ぎ捨てて、コスタリカのジャングルと一つになるのさ。君もいつでも脱いでいいんだよ!」
爽やかな笑顔で語る全裸の彼だが、発言の内容が尖りすぎている。さすがに狂いすぎている。日本では完全にアウト、一発で警察へ一直線の案件だ。
ドミトリー部屋に荷物を置き、ベッドに横たわりながら僕は途方に暮れた。1週間予約してしまったが、一体どうなることか。僕は果たして、この「全裸の楽園」で正気を保ったまま生きて帰ることができるのだろうか。
裸の付き合いと、消え去った「恥ずかしさ」
最初の2日間は、意地でもTシャツとショートパンツを脱がなかった。周りは全員全裸でウロウロしているのに、自分だけがしっかり服を着込んでいる。なんだこの逆・露出狂みたいな謎の疎外感は。
しかし、3日目の朝、転機が訪れた。
朝食の時、ドイツ人のクラウス(全裸)とフランス人のマリー(全裸)が、僕のテーブルにやってきて。最初は目のやり場に困り、相手の目(だけ)を死ぬ気で見ていたのだが、彼らは至って真面目に世界情勢や旅の思い出、環境問題について語り合っているのだ。
そこには下心も、性的な視線も、境界線も一切存在しなかった。
服を着ているからこそ発生する「ブランド」や「お洒落」「貧富の差」といった人間の鎧。それを全て脱ぎ捨てた彼らのコミュニケーションは、驚くほど純粋で、温かかった。
「君はまだ服を着ているね。暑くないかい?」
クラウスにそう言われた時、ふと思った。確かに暑い、暑すぎる。
そして、ここでは服を着ている僕の方が「異端」なのだ。
「……よし、脱いでみるか」
僕は意を決し、服を全部脱いだ。
その瞬間、ジャングルの生暖かい風を全身で感じることができた。
「うわ……なんだこれ……」
体中の細胞が「自由だ!」と叫んでいるのが分かった。
「おめでとうアミーゴ!最高の気分だろ?」
クラウスとマリーがハグをしてきた。全裸の3人が、ジャングルの中にあるホステルでハグをしている。しかも早朝に。なんともカオスな光景だろうか。
恥ずかしさは、脱いだ瞬間の1秒間でどこかへ吹き飛んでいた。僕自身も、どんどん全裸でいることが「日常」へとアップデートされていったのだ。キッチンで全裸で卵を焼き、全裸でコーヒーを淹れる。人間、慣れとは恐ろしいものである。ここから僕のジャングルでの全裸生活が始まった。
全裸生活の始まり
記念すべき全裸生活2日目。僕はついに「アレ」を実行することにした。
そう、全裸でのコルコバード国立公園探検だ。
もちろん、危険がないわけじゃない。変な虫に刺されるかもしれないし、トゲのある草で肌を切るリスクだってある。でも、それ以上に「大自然と一つになる」という体験への好奇心が勝ってしまった。
日焼け止めと強力な虫除けスプレーを全身に塗りたくり、カメラだけを背負う。ホステルで仲良くなった人たちみんなで行く。怪しすぎる全裸探検隊の結成だ。
宿を出て、ジャングルの中へ一歩踏み出した。
「……うおおおお! なんだこれ、めちゃくちゃ気持ちいい!!」
一瞬で感動が全身を駆け抜けた。

ねっとりとした熱帯雨林の空気が、直接肌に触れる。風が吹くたび、ジャングルのエネルギーがダイレクトに伝わってくるのだ。服がないだけで、大自然との距離がここまで縮まるとは思わなかった。
見上げると、真っ赤な鳥が叫びながら飛んでいく。巨大なチョウが僕の肩に止まり、木の上からはホエザルが真っ裸の僕たちの姿を見下ろしてギャーギャー叫んでいる。
「俺、いま完全に地球の一部になってる……!」
途中で川を見つけると、僕らは吸い寄せられるように、川に飛び込んだ。服を濡らす心配も、後で乾かす手間も一切ない。
足元のトゲや蛇には気をつけつつも、五感がバリバリに研ぎ澄まされていくのが分かる。自分自身がこのジャングルに住む一匹の野生動物になったような、最高の解放感だった。

狂乱の夜。全裸で焚き火を囲み、狂ったように踊り明かした
だが、この全裸探検すらも、その夜に訪れた「本当のクライマックス」の序章に過ぎなかった。
無事に探検から戻り、夕食を食べ終えた頃、誰かが「今夜は月がきれいに見えるぞ。庭で火を焚こう!」と言い出した。
ジャングルの真ん中にある宿の広場に、みんなで拾ってきた枝を積み上げる。誰かがライターで火をつけると、パチパチという音とともに、真っ赤な炎が夜の闇を明るく照らし出した。
集まったのは、僕を含めて10人ほどの旅人たち。当然、全員全裸だ。
最初は火を囲んでビールや地元のラム酒を飲みながら、それぞれの旅の話をしていた。しかし、誰かがジャンベ(アフリカの太鼓)を持ち出して「ドンドコドンドコ……」とリズムを刻み始めた瞬間、その場の空気が一変した。
「ウヒョー! 最高だぜー!!」
太鼓の重低音が足元から身体全体に響き渡る。一人が立ち上がって腰を振り始めると、それに引っ張られるように全員が立ち上がった。
炎の光が、裸の男たちの肌を美しく照らし出す。

服もない。靴もない。肩書きも、国籍も、恥ずかしさすらも何もない。
僕らは輪になって、手をつなぎ、炎のまわりをぐるぐると回り始めた。太鼓のリズムはどんどん速くなり、熱気は最高潮に達する。
「ウオオーーーッ!!」 「最高ー!!」
誰かが叫ぶと、みんなで夜のジャングルに向かって叫び返した。
ただ全裸で、炎の周りを狂ったように踊り、叫び続ける。
周りのジャングルからは、ホエザルや夜行性の鳥たちの鳴き声が聞こえてくる。僕らの叫び声とジャングルの野生の音が混ざり合っていく。
汗が滝のように全身から流れる。でも誰も気にしない。
空を見上げると満天の星空が広がっていた。
太鼓の音、メラメラと燃える炎、そして全裸で笑い合う仲間たち。
「あ、俺いま、人生で一番生きている感じがする」
何時間踊り続けたか分からない。最後はみんなで芝生の上寝転がり、星空を鑑賞した。
「最高の夜だな」
隣で転がっているクラウスが、僕に言った。僕も「ああ、間違いなく一生忘れない夜になったよ」と答えた。
理性を全部脱ぎ捨てて、野生の動物として大自然と踊り明かしたあの夜。
あの狂気的で美しかった夜の光景は、僕が死ぬまで忘れないと思う。
旅の終わり、僕は「人間」に戻る
あっという間の1週間だった。
チェックアウトの朝、僕は久しぶりに自分のTシャツとショートパンツを着た。服を着た瞬間、なんだか窮屈な感覚だった。
全裸ホステルで出会った仲間たちが、見送りに来てくれた。もちろん、全員全裸だ。
「バイバイ!またどこかの楽園で会おうぜ!」
「ありがとう!みんな最高だったよ!」
抱き合い、再会を誓い合う。全裸の彼らと、服を着た僕。冷静に見れば、おかしすぎる光景だが、僕の心の中は温かい感謝の気持ちでいっぱいだった。
帰り道、荷物を背負ってジャングルを歩きながら、僕は一人で笑ってしまった。
世界にはこんな狂っていて、美しくて、最高の場所があるなんて。
次は、一体どんな経験するのか、楽しみである。


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