サンホセデルパシフィコの霧深い山の中で、衝撃的な幻覚キノコの体験をした僕。精神の深い場所を旅した後は、暖かい空気を求めていた。
次に向かったのは、オアハカ州の海岸線をさらに南下した場所にある、小さな海辺の村、Zipolite(ジポリテ)。サンホセデルパシフィコからバスで4時間位の距離だ。
ここはメキシコで唯一、公にヌードが許可されているビーチだ。「世界中からヌーディストやヒッピーが集まる、自由で開放的な楽園」……そんな噂を聞いて、期待に胸を膨らませてバスに乗り込んだ。しかし、そこで僕を待ち受けていたのは、想像を絶する欲望が渦巻く衝撃の体験だった。
「服を着ているほうが恥ずかしい」という異常な日常

ジポリテの停留所でバスを降りた瞬間、空気の感じが変わった。 潮風の匂いと一緒に、どこからか甘いお香と、誰かが焼いている肉の香りが漂ってくる。一気にリゾートに来たみたいな感覚だった。
宿にチェックインをして、早速ビーチを歩き始めて、僕はまず自分の目を疑った。 砂浜の上で寝転びながらおしゃべりしている老夫婦も、売店でコーラを買っている若者も、砂浜でヨガをしているグループも……みんな、真っ裸なのだ。
「え、これマジか……」
最初は視線をどこに置いていいか分からず、気づいたら真っ裸の美女をずっと眺めていた。日本で全裸で歩いていれば即座に逮捕だが、ここでは服を着て、リュックを背負い、スニーカーを履いている僕のほうが、どう見ても「変な人」に見える。なんで服を着ているのか、ジロジロ見られる。
服を着ている方がマイノリティーなのだ。ここはマジョリティーが全裸という、不思議な海沿いの村、ジポリテ。
ビーチに座り、しばらく異様な光景を楽しんでいたら、僕の近くに座っていた、美男美女のカップルが話しかけてくれた。アメリカからバカンスでジポリテに遊びに来ているらしい、そして彼らは僕にこう言った。
「ようこそ、ジポリテへ。ここでは何も隠さなくていい。体も心も、全部出しちゃいなよ」
あまりにも皆、全裸でオープンなので、僕の中の「恥ずかしい」というブレーキが、少しずつ外れ始めた。

「自分を脱ぐ」という、最初で最大のハードル
翌朝、僕は意を決してビーチへ向かった。 手にはタオルと日焼け止め。そして、僕を「健全な社会」に繋ぎ止めている最後の砦である、海パン。
砂浜に座り、周りを見渡すと、そこにはあらゆる国籍の人たちが、全裸で太陽を浴びていた。太っている人も、痩せている人も、お年寄りも。誰も他人の体なんて気にしていない。
「よし、僕もいこう!」
僕は砂の上で、ついに海パンを脱ぎ捨てた。 その瞬間、全身を通り抜ける海風の感触に、ゾクッとするような気持ちよさが走った。 服という壁がなくなって、自分が世界と一体になったような、不思議な開放感。そして快感。
「あ、最高かもしれない……」
そんな風に感動していた、その時だ。 向こうから、モデルのように綺麗な真っ裸の女性たちが、楽しそうに笑いながら歩いてきた。彼女たちは僕の目の前まで来ると、足を止めてニッコリ笑った。
「オラ(こんにちは)! 素敵な朝ね!」
眩しすぎる太陽の下で、完璧なほど美しい裸の女性たちが、至近距離で僕に挨拶をしてくれる。 その圧倒的な美しさと「裸」という事実に、僕の脳はパニックを起こした。
そして、あろうことか、僕の股間が正直に反応してしまった。そう、フル勃起してしまったのだ。
「やばい! 止まれ! 落ち着け!」と心の中で叫んだが、もう手遅れだ。 彼女たちは僕の「正直すぎる反応」を見て、クスクスと楽しそうに笑った。
「あら、立派なおちんちんね! ここを楽しんでる証拠よ。気にしなくていいわ、それが自然なんだから。ようこそ、ジポリテへ!楽しんでいってね!」
彼女たちはそう言い残して、去っていった。 恥ずかしさで死にそうになったが、同時に「ああ、ここでは、人の前で全裸で勃起することも自然なこととして受け入れられるんだ」と感じた。
欲望が渦巻く「愛の浜辺」へ

少し落ち着きを取り戻した僕は、ビーチの端にある、切り立った崖の先へ行ってみることにした。 そこには、隠れ家のような小さな入り江があった。 名前は、Playa del Amor(プラヤ・デル・アモール)。日本語に訳すと「愛の浜辺」。
「なんて素敵な名前なんだ。きっと恋人たちが静かに過ごす、ロマンチックな場所なんだろうな」 そんな甘い考えで足を踏み入れた僕は、すぐに自分の無知を思い知ることになった。
ビーチはどこまで続いているのか探検したく、一番端の大きな岩が転がっているエリアに入った瞬間に空気が変わった。 そこは恋人たちの聖地どころか、もっと濃密で、熱い「欲望」が渦巻く場所だったのだ。 後で知ったのだが、ここは世界中からゲイたちが集まる、世界的に超有名な「ハッテン場」だった。
岩陰で、筋肉ムキムキの男たちが絡み合っている。誰でも良いのかと思うぐらいの、大乱交状態。 あまりに堂々としたその光景に、僕は言葉を失った。
「おい、そこの君」
不意に、後ろから声をかけられた。 振り返ると、そこには美術館で見るような彫刻のような体をした男性が立っていた。 彼は僕の目をじっと見つめると、ゆっくりと距離を詰めてきた。
「一人なの? こっちに来て、僕たちと一緒に楽しまない?」
彼の目は、獲物を狙うハンターのようだった。 気づくと、いつの間にか僕の周りには複数の男たちが集まり始めている。皆、完全に僕を獲物にしていた。
そして、クマみたいな見た目の男前なマッチョな男が、僕の股間を触ろうとした。
「アジア人と一緒にやってみたいんだ。良いかな?」
「いや、僕は……ただの旅行者なんだ。その、あっちのビーチから迷い込んじゃって」
僕は必死に言い訳をしたが、彼は僕の肩をガシッと力強く掴んだ。 「やばい、このままじゃレイプされる……!」
本能的に危機感を感じた僕は、なんとか彼の腕をすり抜けて、「グラシアス(ありがとう)!」と叫びながら、崖の階段を全力で駆け上がった。 心臓はまだバクバクしていたが、振り返ったときに見えた、夕日に照らされた彼らの姿は、なぜか美しかった。
元弁護士のマリアとビーチバー
その後、僕は波打ち際にある小さなビーチバーに吸い込まれた。 そこで、この一杯に魔法がかかったような、言葉で表現するのも難しい程美味しいテキーラを注いでくれたのが、店主のマリアだ。

彼女、実はもともとメキシコシティでバリバリ働いていたエリート弁護士だったというから驚きだ。 「ねえ、なんで弁護士辞めてこんなところでバーを?」 僕がそう聞くと、彼女は僕にこう言った。
「法律はね、人を縛るためにある。でもジポリテは、人を解き放つためにあるの。どっちが人間らしい生き方か、一目瞭然でしょ?」
その言葉を聞きながら、僕は今日起きたパニックや恥ずかしさ、そして欲望丸出しの野獣たちを思い出していた。 美女の前でフル勃起してしまった自分。愛の浜辺で男たちにヤられそうになった自分。 そんな自分を、僕は心のどこかでずっと否定しようとしていた。
マリアと話して、ようやく気付いた。ジポリテは「自分を映し出す鏡」なんだ。
僕たちは普段、社会のルールとか「男らしくあれ」「立派であれ」みたいな見えない服(見栄やプライド)を何枚も着込んで、本当の自分を偽りながら生きてる。 でも、ここでは隠せるものは何一つない。
- だらしない体型も、隠しようのないコンプレックスも。
- 自分の意思では制御できない、正直すぎる身体の反応も。
- 剥き出しの欲望も。
それらすべてを「これが人間だろ? 何が可笑しいんだ?」と笑い飛ばして受け入れる。
マリアは弁護士という「最強の鎧」を脱ぎ捨てて、この町でただの人間として自由に生きることを選んだ。一つのビーチバーと共に。
「こうあるべき」なんてガチガチの殻を砂浜にポイ捨てして、自分の本能と向き合う。 ジポリテが教えてくれたのは、剥き出しの自分を愛するという、シンプルで最も困難な「究極の自由」の形だった。
「マリア、僕も少しは自由になれたかな?」 僕がそう聞くと、彼女は新しいテキーラを僕の前に置いて、ウインクした。 「当り前じゃない。ジポリテはもう、あんたの中に流れてる」
マリアが作る魔法のテキーラを何杯も飲み、ベロベロになりながら宿に戻った。

ジポリテを楽しむためのコツ
もしあなたがここを訪れるなら、これだけは覚えておいてほしい。
- 「見る」ではなく「混ざる」こと 服を着たまま真っ裸の他人を見るのは、ここでは失礼なこと。まずは自分も脱いでみよう。同じ感覚を得て初めて、この村の凄さがわかるはずだ。
- 「No」ははっきり言っても大丈夫 愛の浜辺で誘われても、興味がなければ笑顔で断ればいい。ここではみんな「自由」を大切にしているから、無理強いはされない。発展場を探しているなら、愛の浜辺はかなりおすすめ。アジア人男性はここでは、かなりモテる。すぐにモデル級の男たちに囲まれるだろう。特に週末は、かなりの乱交状態になるらしい。
- 「日焼け止め」は絶対に忘れないで 普段服に隠れているところは、驚くほどデリケート。特にお尻や股間の日焼けは、その後の旅を地獄に変える。僕は、アソコが火傷したみたいになって、かなり苦しんだ。海に優しい日焼け止めを、これでもかというくらい塗っておこう。特に股間の日焼け止めは忘れずに。
- 境界線を楽しんでみる 「自分は男だから」「普通はこうだから」という考えを、一度砂浜に置いていってみよう。恥ずかしさを捨て、知らない人たちの前で真っ裸になったら新しい自分と出会えるだろう。ここでしか体験できない、ジポリテを全身(全裸)で感じてみてほしい。
最後に

水平線に沈む夕日の中、裸の人たちが笑い、愛し合っている。 その光景は、僕が今まで見てきたどんな景色よりも、人間らしくて力強かった。
砂漠で宇宙を見て、山でキノコになり、ジポリテで真っ裸になる快感を学んだ。 メキシコは、僕の「当たり前」をどんどん壊していく。
エロも、スピリチュアルも、バイオレンスも、 全部飲み込んで強烈なエネルギーを放つこの国を、僕はもっと知りたい。

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