
2年ぶり、8回目の開催となった「雪虫」。
会場は、ふらんす座。
出演は、ロープアーティストの雨宮蛍さん、受け手のYu-koさん、そして尺八演奏の川口賢哉さん。
私はこの日、観客としてではなく、カメラマンとして現場に入りました。
ずっと楽しみにしていた蛍さんのショー。
ようやくこの日が来た、という気持ちで、会場へ向かう足取りも自然と軽くなっていました。
開場前、会場に流れていた空気

開場時間より少し早めに入り、演者の皆さんとお話をしたり、物販コーナーの展示を手伝ったりしながら準備の時間を過ごします。
誰よりも早く現場入りしていたのは蛍さんでした。
縄教室に通われていた方から畳をお借りして設営されたそうで、私が到着したときには、すでにステージは完成していました。
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▲ふらんす座は、吊床での演目にもしっかりと対応されています。
これから2年ぶりのショーが始まるとは思えないほど、蛍さんはいつもと変わらない、ほんわかとした雰囲気。
肩の力が抜けていて、穏やかで、リラックスした空気をまとっていました。
尺八奏者の川口賢哉さんは、とても親しみやすく、話していると自然と場が和む方です。
雪虫では、状況に合わせてアドリブで尺八を演奏されます。その場の空気を読みながら音を重ねていく必要があり、技術だけでなく感覚の鋭さも求められる演奏です。
今回が初対面でしたが、賢哉さんのお話はどれも興味深く、気づけば三人でしばらく談笑していました。
ほどなくしてYu-koさんも到着し、演者が揃います。
蛍さんがショーへの参加をお願いした際、Yu-koさんも賢哉さんも即答で出演を承諾されたそうです。
これまで何度も一緒にショーをされてきたお二人だからこそ感じられる、蛍さんへの信頼感と、チームとしての団結力が自然と伝わってきました。
少しずつ埋まっていく客席

演者の皆さんが衣装やメイクの準備をしている間、私は会場の物販ブースに立っていました。
開演30分前に開場されると、観客が続々と入ってきます。
あっという間に客席は満員になりました。
物販では、蛍さんが制作されたブレスレットや、蛍さんと共同制作した緊縛馬グッズを販売。
手に取って、そのまま購入してくださる方も多く、ブースに立ちながら嬉しさを噛みしめていました。
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▲馬グッズも色々な場所で販売できて幸せです。
印象的だったのは、客層です。
いわゆるSM系イベントのイメージとは少し違い、会社帰りの方や女性同士など、気取らない雰囲気の方が多く見られました。
雪虫は、蛍さんが年に一度開催しているプレイショー。
普段の蛍さんは、ロープアーティストとして、SMとは少し距離のあるフィールドで活動されています。
そのバックグラウンドもあってか、客席全体にどこかおしゃれで、洗練された空気が流れていました。
以前蛍さんに、長編インタビューをさせていただいたので気になる方はぜひ、こちらを見ていただければと思います。
⇒ 緊縛モデルとして初デビュー:広島縄会「雨宮蛍」主催の緊縛講習会
始まりは、とても静かに

いよいよショーが始まります。
黒の和風衣装をまとった蛍さん。
白い襦袢に身を包んだYu-koさん。
オレンジのストールが印象的な賢哉さん。
三人が静かに登場し、まずは挨拶。
たくさんの方が集まってくれたことへの感謝の言葉が、丁寧に語られます。
そして、賢哉さんの尺八の演奏とともに、ショーがスタートしました。
舞台中央に正座するYu-koさん。
その背後から、蛍さんがやさしく抱きしめます。
黒髪を丁寧に片側へ寄せ、ゆっくりと、静かに緊縛が始まります。
私の中での蛍さんのイメージは、いつもにこにこしていて、優しい表情。
けれど、ショーの中で見せる蛍さんは、クールで鋭い眼光を放っていました。
その表情の違いに、思わずドキッとします。
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▲尺八の音色が心に染み渡ります。
Yu-koさんが膝立ちになり、蛍さんが吊り床に縄をかけていく。
無駄なBGMはなく、響くのは尺八の音だけ。
ときおり、尺八を叩いて刻まれる乾いたリズムが、空気を引き締めます。
熱が残る時間

丁寧に縄をかけたあと、Yu-koさんは横吊りに。
その状態で、真っ赤なバラ鞭がやさしく振るわれます。
すべての流れは、Yu-koさんの反応を見ながら、蛍さんのフィーリングで進んでいく。
二人の関係性が、そのまま動きとして現れていました。
Yu-koさんが痛みで声をあげると、それを予期していたかのように、尺八の音色は静かな旋律へと変わります。
Yu-koさんを床へゆっくり下ろし、体勢を変える。
その合間ごとに、蛍さんはやさしく身体を撫でます。その仕草から、確かな愛情が伝わってきます。
畳の上に仰向けになり、両足に縄がかけられ、再び鞭が入る。
じっとりと、熱を帯びた時間。
Yu-koさんはまた、艶やかな声を上げます。
叩いたあとを、やさしく撫でる蛍さん。
やがて、寝転がったままのYu-koさんの足の縄を、一本ずつほどいていきます。
足が動けるようになると、Yu-koさんは正座の姿勢へ。
上半身の縄も、ゆっくりとほどかれていきます。
賢哉さんの尺八は、クライマックスを告げるかのような激しい演奏に。
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▲ぽっと心が温まります。
少しずつ縄をほどきながら、蛍さんが抱きしめる。
暖かくて、やさしい時間。
すべてをほどき終えたあと、Yu-koさんを畳の上に寝かせ、蛍さんが挨拶をしてショーは幕を閉じました。
演者三人が、観客全員に向けて改めて挨拶をします。
気がつけば、あっという間の1時間30分。
観客も皆、余韻に浸るように、演者と話をしたり、名残惜しそうに会場を後にしていました。
雪の季節に似合う、あたたかさ
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▲集合写真に入れていただきました♡
演者さんたちが、事前に細かく打ち合わせをしていたわけではなく、その場の感覚だけで、ここまで息を揃えられることに素直に驚きました。
音、縄、呼吸。
誰かが前に出すぎることもなく、それぞれが相手を感じ取りながら進んでいく時間。
雪虫という名前のとおり、冷たい季節にとてもよく似合うショーでした。
張りつめた空気の中に、確かに流れていた、心のあたたかさ。
それは派手な演出ではなく、触れたあとに静かに残る感覚です。
カメラマンとして現場に立ちながら、同時にひとりの観客として、その空気を受け取っていました。
すべてが終わったあとも、しばらく体の奥に残っていた余韻。
また次の雪の季節に、この名前を思い出すのだと思います。


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