
香川県丸亀市、宮庵という名の静かなカフェBAR。
普段は「宮庵レインボーカフェ」として営業しているこの場所が、一夜限りで“縄の舞台”に変わりました。
この夜に行われたのは「Rope Art Show in 丸亀 vol.3 」。
大阪からはご存知!御伽棋王子(ごぞんじおとぎおうじ)さんと亞魅ちゃん(あみちゃん)さん、岡山からはリリィ★スターダストさんと紫陽花あざみ(あじさいあざみ)さんが登場し、緊縛の世界をそれぞれの色で表現しました。
主催は信天翁如水(しんてんのうじょすい)さん。岡山で縄会を主催されている方で、驚くほど柔らかい物腰の方です。
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▲持ち運び自由な吊床。こちらのカラビナはご存知!御伽棋王子さんのもの。
この日の吊り床も如水さんの手作りで、どこでも組み立てられるよう工夫されたオリジナル仕様でした。
“自分たちの手でつくる”という精神が、そのまま会場の空気にも広がっていました。
信天翁如水さん公式X:https://x.com/sintenoh
まるでホームパーティーのようなまったり空間
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▲リリィさんとのショー開始前のまったりタイム。
開場は17時。
扉を開けると、すでに温かな空気に包まれていました。
緊張感というよりも、和やかでまったりとした雰囲気です。
お客様も演者さんも垣根がなく、みんなでショーの準備をしたり、おしゃべりを楽しんだり。
地方都市ならではの距離の近さを感じる空間でした。
岡山の鞭職人・一間庵さんの姿もありました。
以前「BlackBerry超縄祭」でお会いしたときと変わらず穏やかな雰囲気で、そこにいるだけで会場がやさしくなるような存在感です。
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▲音響担当のレイさんもお客様です。
席は完全自由。
前列で迫力を味わうもよし、吊り床の後ろ側で“裏側の動き”を覗くもよし。
私は御伽棋王子さんのショーを吊り床の後ろから、リリィさんのショーを最前列で拝見することにしました。
ご存知!御伽棋王子さん×亞魅ちゃんさん〜優しさと多幸感の縄〜l

18時、信天翁如水さんの口上で「ご存知!御伽棋王子さん×亞魅ちゃんさん」のショーが始まります。
「亞魅ちゃんが正式名称なので、“亞魅ちゃん”だけだと呼び捨てなんですよ」という一言に、会場大爆笑。
和装の二人が現れた瞬間、空気に緊張が走ります。
御伽棋王子さんが縄を手に取り、ゆったりと所作を重ねる。
後方席からは、正面では見落としがちな指の運びや足さばき、結び目の向きまでよく見えました。
無駄のない動きが続き、静かな美しさが際立ちます。
御伽棋王子さんは、細やかで正確な手つきで亞魅ちゃんさんを縛っていきます。
それでも場には張りつめた気配が流れ、二人の呼吸が心地よいリズムを刻みました。
縄の擦れる音と浅い吐息。近い距離ならではの奥行きが、観客の身体にそのまま届きます。
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▲息遣いがこんなに聞こえる距離でショーを見るのは初めて。
彼女は痛みに強く、ほとんど声を上げません。そのため、普段はアドレナリン全開の“殺し合いのようなショー”を行うというお二人ですが、この夜はあえての「優しさ」と「多幸感」。
「縄を通して、優しい世界を伝えたい」という想いが、演目全体の温度を高めていました。
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▲お互いの優しさが見ていて伝わりました。
選曲も特別で、お互いの好きな曲を半分ずつ採用。
“好き”を尊重し合う構成から、信頼の深さがにじみます。
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▲所作が美しい。
縄だけで進むシンプルな演出にもかかわらず、確かな物語が立ち上がりました。
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▲実は男性の緊縛師さんのショーを見るのはこの日が初めてでした。
亞魅ちゃんさんが御伽棋王子さんを見つめるその視線は強く、美しく、その瞬間、観客は誰も息をするのを忘れてしまうほどでした。
静かで、優しい時間がゆっくりと流れていきます。
ご存知!御伽棋 王子さん公式X:https://x.com/gozonji_ouji
リリィ★スターダストさん×紫陽花あざみさん〜可愛くて、痛くて、美しい〜

ショーが終わると、会場はすぐに次の準備へ。
観客も一緒に吊り床を動かし、ブルーシートと滑り止めを敷いて床マットを広げます。
リリィさんの指示で角度を微調整。手を動かすほどに、自分もイベントの一部になった実感が芽生えました。
19時。
信天翁さんの粋な紹介で「リリィ★スターダストさんと紫陽花あざみさん」のショーが始まりました。
「王子さんの“ご存知”を拝借して、もう“ご存知リリィ★スターダストさん”でいいでしょう」と笑いを誘う一言で、会場の空気が柔らかくなります。
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▲ステージ衣装が華やか。あざみさんのワンピースが可愛い。
この日のリリィさんは、まるで別人のようでした。
以前Y-DAN倶楽部BARで拝見したときとは違い、華やかでファンシーな世界観。
まさに“リリィアントワネット女王様”と呼びたくなる豪華絢爛な装いです。
一方のあざみさんは、水玉のワンピースにお人形のようなつけまつげ。
絵本の登場人物のような可愛らしさです。
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▲毒かわいい世界観。
リリィさんが赤い縄であざみさんを縛っていくと、あざみさんの赤い靴、赤い蝋燭が重なり合い、ステージ全体が一枚のアートのように見えました。
あざみさんが吊られ、打たれ、蝋燭の熱が肌を焦がすたび、甘く短い声が漏れます。
痛みすらも“おしゃれ”に感じてしまうほど、完成された世界でした。
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▲ハイソックスに穴を開けたり、ろうを垂らしたり背徳感のある美しさ。
この日の流れは大まかな設定以外は、即興だったそうです。
苦手なことや嫌なことだけを事前に確認し、それ以外は空気を読みながら展開する。
計算されていないようで、完璧に調和のとれたショーでした。
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▲リリィさんのいい笑顔。
リリィさんが鞭を振るうときは、弾けるような笑顔。
あざみさんの痛みに耐える声と、リリィさんの笑顔のギャップには、思わず息をのむほどの迫力がありました。
吊りからおろしたあとも、鞭と蝋燭を交互に使いながら、二人が目を合わせて微笑み合う瞬間は印象的で、まるで中世の貴族の遊びを見ているような華やかさでした。
リリィ★スターダストさん公式X:https://x.com/rino_chang
ショーが終わってからも楽しい交流会
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▲前列左からリリィ★スターダストさん、紫陽花アザミさん、信天翁如水さん。後列左から亞魅ちゃん(ぬいぐるみ)、ご存知!御伽棋王子さん。
ショーが終わると、全員でお片付けです。
蝋のついたシートを剥がし、マットを拭きます。
誰もが自然に手を動かし、笑顔が絶えません。
そのあとは交流の時間。
私は信天翁如水さんに“yoga縄”を体験させていただきました。
これは如水さんが研究しているオリジナルの緊縛で、可動域を広げてから固定するリラックス効果のある緊縛です。
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▲苦しくない、痛くない緊縛。
「緊縛工程の10のうち5はストレッチ」というほど、準備を大切にされています。
肩こりがひどい私にはぴったりで、上半身を丁寧に伸ばしたあと、後ろ手で手の甲と甲を合わせるように縛られると、
自然と姿勢が整い、胸が開いて呼吸が深くなるのを感じました。
巻き肩の改善にもつながりそうで、緊縛の新しい可能性を肌で実感します。
周囲では、一間庵さんの鞭を試す人や、ご存知!御伽棋王子さんが鞭を振る姿も見られました。
一間庵さんの鞭の中には透明のものがあり、見た目は可愛いのに実際はかなり凶悪。
その鞭を亞魅ちゃんさんに振る御伽棋王子さんの姿に、場の空気が一瞬で引き締まりました。
さらに、来場者の方が御伽棋王子さんによるバラ鞭を体験する場面も。
来場者の方が「どんな鞭を今後作ってほしいか」などを一間庵さんへ直接リクエストする声も多く上がります。
実際に振って意見を交わせる機会は珍しく、貴重な交流の場だと感じました。
アットホームな空気の中にも、道具づくりへの真剣な対話があり、“職人と観客が混ざり合う空間”という表現がぴったりです。
居心地の良いイベントでも、人数が多いと全員と話すのは難しいものですが、今回は規模がちょうどよく、話していない人がいないのではと思うほど自然に交流が広がりました。
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▲またたび饂飩さんへ、お邪魔しました。
帰路についた方もいましたが、残ったメンバーでうどん屋さんへ。
香川といえばやはりうどんです。
温かい出汁の香りに包まれながら、ショーの余韻を語る時間は、まるで打ち上げというより延長戦のよう。
ここまで“交流会”が本来の意味で機能しているイベントは珍しく、印象に残ります。
グループができていて初参加者が入りづらいこともありますが、この日は誰もが同じ輪の中にいて、穏やかな笑顔が絶えませんでした。
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▲最後は如水さんの車にみんなで荷物を運びます。
縄がつなぐ縁
イベントのあと仲良くなった方と宮庵に戻り、マスターを交えて軽く一杯。
電力自由化の話からクラブのテキーラ事情まで、話題が尽きず、笑い声が響きます。
このイベントがなければ出会わなかった人たち。
縄がつないでくれた縁を感じながら、丸亀の夜は静かに更けていきました。
緊縛という言葉の裏にあるのは、恐怖や支配ではなく、信頼とぬくもりです。
信天翁如水さんの作った吊り床は、人を縛るためのものではなく、人と人を結ぶためのもの。
地方のカフェで生まれたこの小さな奇跡は、縄というアートの本質を教えてくれた夜でした。
宮庵(レインボーカフェバー)
住所:〒763-0043 香川県丸亀市通町41
店舗公式Instagram:https://www.instagram.com/miyan4691/
営業時間:イベントなどにより店舗の営業時間が異なるため、公式情報を確認ください。


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