
おしゃれなカフェ、K-POP、コスメ。
いまの韓国旅行は、きれいで、洗練されていて、どこを切り取っても絵になります。
けれど、街を少し外れたところには、あまり語られなくなった場所や、意図的に見えなくされた歴史が、まだ静かに残っていました。
今回は、そんな場所を歩きます。
かつて置屋街として栄え、いまは再開発の波にのまれつつあるエリア。
派手さはないけれど、確かに“気配”の残る街です。
韓国では日本と同じく、本番行為は違法。
2004年に制定された性売買特別法により、
売る側、買う側、斡旋する側、そのすべてが処罰対象となりました。
以前は「ソウル五大置屋街」と呼ばれた場所があります。
清涼里、ミアリテキサス、永登浦、千戸、龍山。
どの街も、取り締まりと再開発によって姿を消したと言われています。
とはいえ、本当に何も残っていないのか。
今回はその空気を確かめるため、清涼里と永登浦を歩いてみました。
清涼里588|置屋街は消え、街だけが残っている
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▲588の跡地が高層マンション。
まず足を運んだのは、清涼里588。
清涼里588は、ソウルの置屋街の中でも特に栄えていた場所。
現在、このエリアに置屋はひとつも残っていません。
かつて置屋が並んでいた一帯には、高級タワーマンションロッテキャッスルが建ち、再開発は今も続いています。
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▲昔こちらにも置屋があったそうですが、再開発エリアに。
ただ、清涼里という街そのものは、とても独特。
昭和ノスタルジーを感じる雑多な風景と、前衛的な都市開発がごちゃ混ぜで、歩いているだけで、街の表情が次々と変わっていきます。
ソウル市東部に位置し、ソウル駅から地下鉄1号線で約18分。
観光客向けのエリアではありませんが、歩いているだけで、少しだけ“裏側のソウル”を覗いた気分になります。
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▲のんびりとしたローカルな市場。
元風俗街だった痕跡は、正直ほとんど見つけられません。
「ここが置屋街だった」と知らなければ、気づかずに通り過ぎてしまいそうです。
個人的には、「オーパルパル」と呼ばれるこのエリアの言葉の響きが、妙に耳に残り、今回どうしても来てみたかった場所でもあります。
清涼里にはロッテマートがあり、観光客であふれるソウル駅のロッテマートよりものんびりお買い物ができます。
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▲清涼里駅直結のロッテマート、ロッテデパートがあります。
永登浦|日常のすぐ隣にある置屋街

次に向かったのは永登浦。
駅周辺には東横INN永登浦があり、日本人にも少し馴染みのあるエリアです。
今回、筆者もこちらに宿泊しました。
永登浦には、規模は縮小しつつも、現在も営業が確認できる置屋があります。
まず驚いたのは、その立地。
目の前には新世界百貨店とTIMES SQUAREという大型ショッピング施設。
買い物袋を持った人たちが、何事もない顔で行き交う道沿いに、ガラス越しの置屋が並んでいます。
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▲隙間から少しだけ見えるけど、営業していない模様。
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▲早朝は人通りはほぼない。
誰も足を止めず、特別な視線を向けることもない。
日常と性風俗が、あまりにも自然に隣り合っていました。
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▲こういった小屋が10件ほどあります。
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▲中は暖房が完備されていそう。
現在は、大通りに面した大きな置屋は営業しておらず、小さな置屋で女の子一人と交渉し、その後ラブホテルへ行くスタイルのようです。
客引きもなく、女の子たちはすらっとしていて、いかにも韓国らしい美しさ。
とはいえ、確認できた置屋は4軒ほど。
ここもまた、再開発の波に飲み込まれる日は近そうです。
渋谷で例えるなら、ヒカリエとストリームの間の道が、全部スケスケの風俗街。
そんな感覚でしょうか。
永登浦にはラブホテルも多く、ギラギラとしたネオンの飲食店も並びます。
日本の繁華街とよく似た、エネルギッシュな空気があります。
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▲ハングルでなければ、日本と見間違えてしまう。
置屋の裏側に残る、もうひとつの永登浦

置屋街と道を挟んだ反対側には、壁面アートが施されたエリアがあります。
以前はドヤ街として、低所得者層の生活を支えてきた場所。
今も人が暮らしている気配があり、高層ビル群の中に、壁の薄そうな住宅が密集している光景は、少し不思議です。
奥へ進むと、広場で炊き出しが行われていました。
危険な雰囲気はありませんが、細い道を歩いているとなぜかドキドキが止まりません。
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▲生活音が聞こえてくる不思議な小道。
旅行者がわざわざ訪れる場所ではないかもしれません。
それでも、永登浦という街の奥行きを感じさせる一角でした。
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▲国の管理エリアとのこと。ここも再開発されそうですね。
番外編:DMZ|近くて遠い北朝鮮

今回は、DMZにも足を運びました。
日本の隣国でありながらも、訪れることが難しい、情報の少ない北朝鮮。
こちらを見ることができる箇所になります。
DMZとは、北緯38度線付近、軍事境界線を挟んで南北それぞれ2km、計4kmにわたる地域。
韓国と北朝鮮はいまも停戦中。
決して「終わった戦争」ではありません。
とはいえ、ソウルの街を歩いていると、戦争の気配はほとんど感じません。
DMZは現在、一大観光地となっており、世界各国から多くの人が訪れています。
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▲当時の車両。三菱、三井の製作でした。
ガイドさんによると、愛の不時着の影響で、訪問者はかなり増えたそう。
以前は板門店(軍事境界線)を訪れることもできましたが、アメリカ人兵士が北朝鮮へ亡命した事件をきっかけに、現在は無期限で観光客の立ち入り禁止となっています。
この日は霧が濃く、川を挟んで対岸にある北朝鮮を目視することはできませんでした。
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▲霧がすごくて何も見えません。
DMZ内にある従軍慰安婦像の前で、記念写真を撮る人たちを見ながら、日本人として少しだけ、胸に引っかかるものが残りました。
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▲なんだかもやっとした気分に。ここの説明に日本語記載がないのもさらにもやっと。
おわりに|キラキラじゃない韓国も、確かにある

再開発で消えていく街。
日常と性風俗が、特別扱いされることなく並んでいた風景。
そして、すぐ近くにある国境と緊張感。
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▲ここを渡れば北朝鮮。
おしゃれで洗練された韓国とは少し違うけれど、こうした街を歩いてみると、国の輪郭が、少しだけ立体的に見えてきます。
キラキラじゃない韓国。
でも、確かにそこにある韓国。
そんな一面を知る旅も、悪くないですね。


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