
ラバー、ボンテージ、全身タイツ、ガスマスク。
地下へ降りた瞬間、そこは“日常の外側”でした。
今回訪れたのは、大阪・梅田で開催されたフェティッシュパーティ
「BIZZARRE BANQUET 〜Osaka Fetish Ball〜 mini party」。
BBBの愛称でも親しまれているイベントです。
SMイベントとも少し違う。
クラブイベントとも違う。
けれど確かに、“好き”を全力で楽しむ人たちの熱量がある。
ドレスコードは、ラバー、PVC、レザー、ボンテージ、全身タイツ、着ぐるみ、ゴシック、サイバー系などの“フェティッシュファッション”。
もちろん必須ではありませんが、それぞれが自分の「なりたい姿」で会場へやってきます。
そこには、年齢も肩書きも関係なく、それぞれが“なりたい姿”で過ごしている、不思議な解放感がありました。
地下で始まる、“非日常”のパーティ

会場は梅田のライブハウス。
地下へ降りる階段の時点で、もう空気が違います。
入場と同時に、思い思いのフェティッシュファッションに身を包んだ人たちが続々と集まってきました。
艶やかなラバー、拘束感のあるボンテージ、顔まで覆うマスク姿。
海外の方の姿もあり、まるでヨーロッパの秘密クラブのよう。
会場にはVJ映像が流れ、DJの音楽が響きます。
退廃的でダークなのに、どこかおしゃれ。
中世ヨーロッパの舞踏会みたいな空気もありつつ、近未来感もある。
「昔のイギリスってこんな感じだったのかな?」と、ぼんやり思ってしまうような、不思議な世界観でした。
DJの音楽も、フロアの空気にぴったり。
暗いのに閉塞感はなく、会場全体にゆるやかな一体感があります。
素顔が分からない人も多いのに、不思議と怖さはありません。
むしろ、その匿名性が妙に心地いい。
“誰なのか”よりも、“何が好きなのか”で繋がっている空間
「フェチを共有できる場所を作りたかった」|主催・篠宮紫穂さんインタビュー
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▲BIZARREBANQUET公式X掲載写真。
今回イベントを主催したのは、BAR hakobunenomoriの篠宮紫穂さん。
会場内を忙しく動き回りながらも、来場者へ自然に声をかけている姿が印象的でした。
「フェチって、一人でも完結できてしまう
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▲BIZARREBANQUET公式X掲載写真。
紫穂さん自身もSMプレイヤー。
けれど、SMとフェチは“似ているようで少し違うもの”だと話します。
「私自身もSMプレイヤーではありますが、SMと似て非なるもののなかに、フェチだとかフェティッシュだとかいうものがあるんです。細かく言い出したらキリがないんですけど、私はどちらも好きなんですよね。」
そのうえで、紫穂さんは“フェチならではの孤独”についても話してくださいました。
「フェチって、SMと違ってひとりでも完結できることが多いんです。だから、他人と関わらなくても成立してしまう。でも、やっぱり寂しいじゃないですか。」
その言葉がとても印象的でした。
「いろんなフェチの方たちが、少しずつ違いながらも集まって共有していく。そうすると、今まで気づかなかった感覚を知ることもあるし、自分の中のフェティッシュをもっと強く意識できるようになるんです。」
「非日常に浸る楽しみが増えることって、すごく良いことだと思っていて。それを共有できる場所を作りたかったんです。」
会場に漂っていた独特の自由さは、この考え方から生まれていたのかもしれません。
安心して遊べる、“体験型フェティッシュ空間”

今回のBBBは、ただショーを見るイベントではありません。
バキュームベッド、人喰いソファー、マミー体験、緊縛体験、撮影ブースなど、“参加して楽しめる”空間になっています。
「大阪で20年以上SMのお仕事をしてきた人脈を活かして、賛同してくださるプロのミストレス様や、フェチに特化したサークルを長年されているフェチ仲間様に協力していただいています。」
「技術的にも安心してフェチを堪能していただける、いろいろなブースが今回のおすすめポイントです。」
実際、会場には“怖さ”よりも、安心して遊べる空気が流れていました。
更衣室やクロークも完備。
衣装レンタルもあり、“非日常へ入る準備”まで整っています。
「お客様が主役になって、非日常的なコスチュームで踊ったり、お喋りしたりできる空間にしたかったんです。」
会場で自然と会話が生まれていたのも、そういう空気づくりがあったからなのかもしれません。
「今回はミニパーティですが、今後は年1ペースで、ラグジュアリーな会場でも開催していきたいと思っています。」
BBBの世界観は、まだまだ広がっていきそうです。
“セカンドスキン”としてのラバー

この日、紫穂さんが着用していたラバーもかなり印象的でした。
着ていたのは、日本のラバーブランド「Kurage」のキャットスーツ。
そしてマスクは、惜しまれながら昨年閉店した、ドイツのラバーブランド「Fantastic Rubber」のものだそう。
実際に触らせていただくと、これが本当に不思議。
ラバーなのに冷たすぎず、しっとりしていて、身体に吸い付くような感覚があります。
触ってみると、想像していた“服”という感覚と少し違いました。
ほんのり体温も感じて、まるで皮膚の延長みたい。
「動きやすさ重視なんです。着るのは大変なんですけど、オーダーメイドなので、着ると肌に馴染むんですよね。」
「まさに“セカンドスキン”という感じです。」
その言葉の意味が、触った瞬間に分かりました。
私はラバー未経験なのですが、正直かなり興味が湧きました。
(……次回までには、ラバーが似合う身体を目指したいです。)
人喰いソファーに飲み込まれてみた

会場でまず体験したのが、人喰いソファー。
名前のインパクトが強すぎます。
実際に入ってみると、思ったより重さは感じません。
ただ、圧迫感で鼻が少し痛い。
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▲鼻が刺激的です。
しかも視界がぼやけるので、「いま自分に何が起きているのか」が分からない。
その状態で、綺麗な女王様が座る。
怖いわけではないのですが、妙にドキドキする。
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▲空気が合って重さが分散されるので、思っているよりはしんどくないです。
『ジョジョ7部』の圧迫祭りって、たぶんこういう感じなんだろうな……と妙な納得感がありました。
マミー体験で知った、「人体ってこんなに湿気が出るんだ」

以前、香川県のハプニングバー「Adoration」でお会いした方とも、イベント会場で偶然2年ぶりに再会。
「こんなところで再会するんだ」と思わず笑ってしまうような、BBBらしい出来事でした。
そのあと、私がマミー体験をしていたのですが、また偶然隣にいらっしゃいました。
普通ではありえないマミー状態で近況報告をしているのも、なんだか面白い時間です。
今回は響女王様に巻いていただいたのですが、これがまた不思議な感覚。
特に動いていないはずなのに、ラップの内側がどんどん湿っていきます。
人体って、こんなに水蒸気を出してるんだ……と妙に感動しました。
包まれている安心感と、熱がじわじわこもる感覚。
なんとも言えない、むずむずする感覚があります。
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▲みんなに見下されてなんだか恥ずかしい。
BBBの文字は、紫穂さんがラップに書いてくださいました。
ラバーもこういう感覚になるのかな?と想像が広がります。
“なりたい自分”を残せる、西ノ兎さんの撮影ブース

BBBでは、写真撮影ブースもかなり人気でした。
撮影を担当されていたのは、西ノ兎さん。
イベント中、色々な来場者の方が順番に撮影してもらっていて、ブースの周囲には常に人が集まっています。
私も、イベントでお話した方たちと一緒に撮影していただくことに。
フェティッシュな衣装と、会場の退廃的な空気感が合わさって、かなりクールな写真に仕上がっていました。
しかも、わいわい撮影していた流れで、私1人の撮影までしていただけることに。
せっかくなので、普段使っているカメラも一緒に撮っていただきました。
これがかなりお気に入り。
「今後のカメラマン用のアーティスト写真、これにしたい…♡」と思うくらい、世界観のある写真を撮影してくださいました。
ただ、ここで大失態。
渾身のカメラマン宣材写真なのに、カメラキャップを付けたままでした。
次回撮影していただくときは、絶対にキャップを外して挑みたいです。
「球場では絶対に分からない」紳士たちのフェティッシュ

今回かなり印象的だったのが、広島から来られていた75歳の男性。
カープグッズに身を包み、まるで球場帰りのような姿で来場。
そこから会場でセクシーな女装姿へ変身されていました。
自己紹介の名刺をいただき拝見すると、お名前はアナルイレコさん。
「変態は長生きの秘訣ですよ」
そう笑いながら、性器ピアスやアナルタトゥーのお写真を見せてくださる。
しかも、
「今日ね、無くした性器ピアスを買いに行ってきたんよ!」
と、本当に楽しそう。
球場で見かけても、こんな一面があるなんて絶対に気づかない。
でも、その人の中にはこんなにも自由で遊び心のある世界が広がっている。
会場では、ボンテージファッションが好きだけれど、普段はなかなか着る機会がないという女性ともお話しました。
「今日は好きなお洋服を着られるのが楽しみだったんです」
と嬉しそうに話していたのが印象的。
さらに、私と同級生だと後から知ってびっくりした、ドール向けにフェティッシュアイテムを制作されている女性とも仲良くなりました。
初対面同士でも、自然とファッションの話や体験の感想で盛り上がっていく。
BBBは、“性癖を解放する場所”というより、“好きな自分になれる場所”なのかもしれません。
人間かどうかも分からない、“ラバーの住人”たち

全身を覆うコスチュームに身を包んだ男性二人組もかなり印象的でした。
もう、性別も年齢も、人間かどうかすら分からない。
活動写真も見せていただいたのですが、近未来的でアーティスティック。
“人間らしさを消す”ことで、逆に強烈な個性が生まれているのが面白かったです。
イベント終盤、そのままの姿で外へ出ていき、通行人の視線を集めていました。
でも、ご本人たちはまったく気にしていない。
むしろ、そこまで含めて作品のようでした。
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▲アンドロイドなのかもしれない。
「人間ですか?」
という問いに対して、
「おっさんですよ」
と返していたのが最高でした。
コスチュームって、“なりたい自分”になれる装置なのかもしれません。
ガスマスク姿の女王様たちによる圧巻のショー

ショータイムも圧巻でした。
ステージへ現れたのは、しほさんをはじめとするガスマスク姿の女王様たち。
そして最初に登場したのは、全身タイツ姿の受け手の方。
誰も素顔が分からない。
無機質なのに、妙な存在感があります。
まさに今回のBBBを象徴しているようなショーでした。
最初の全身タイツ姿の受け手の方は、四つん這いでステージを歩き、しほさんに撫でられたり、突き放されたり。
顔も見えない。
視界も奪われている。
それなのに、そこにいる存在感だけがどんどん強くなっていくのが不思議でした。
そして次に、ラバーのマスクに口輪をつけた、もう1人の受け手の方が登場。
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▲顔がわからないのが、人間離れした雰囲気を作り出しています。
ラップで椅子に固定され、視界を奪われた状態で、しほさんの鞭を受けていきます。
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▲VJの背景も雰囲気を引き立てます。
鞭が振られる瞬間、会場の空気がピリッと張る。
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▲鞭の乾いた音が響く。
その後、しほさんがご自身のガスマスクを外し、受け手の方のマスクも外されます。
顔があらわになった受け手の方に、ラップで口を塞いだり、ビニール袋を被せて呼吸を制限して、その状態で鞭を打つ。
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▲全員が呼吸をとめて見守る。
見ているこちらまで緊張するような展開でした。
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▲髪を鷲掴みに。ドキドキ。
さらに、しほさんたち女王様に縄で両手を拘束され、身動きの取れない状態に。
そのまま鞭を受けていく姿に、受け手の方が痛みに耐える声をあげるたび、こちらまで身体が硬直するような感覚がありました。
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▲口元に覆いがないため、痛みに耐える声が響き渡る。
ショー全体を通して、退廃的で、美しくて、どこか夢を見ているかのよう。
SMショーというより、一つの舞台作品を見ているような空気があります。
そして最後。
しほさんたち女王様が去ったあと、ステージに残されたのは受け手の2人だけ。
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▲静かな時間が流れます。
全身タイツ姿の方が、ゆっくりとタイツを脱ぎながら、先ほど鞭を受けていた方へ重なっていきます。
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▲甘く苦しい物語。
その光景を見ながら、“辞めたいのに、気づいたら沼へ落ちていく感覚”みたいなものを感じました。
理想の自分と、現実の自分。
そのギャップに苦しみながらも、ありのままを受け入れていく。
そんな物語を見ているような、不思議な余韻が残るショーでした。
“エロ”より、“好き”を表現する空間だった

イベント中、踊る人、写真を撮る人、体験ブースで遊ぶ人、のんびり会話する人。
みんな自由でした。
不思議と、“ねっとりしたエロさ”はありません。
もちろんSMやフェティッシュのイベントなのですが、どちらかというとアートやファッションに近い感覚。
だからこそ、初対面同士でも自然と会話が生まれていたのかもしれません。
「好き」を、美しく、自由に表現している空間でした。
フェティッシュって、単なる性癖ではなく、“自己表現の文化”なのかもしれません。
地下で開かれた秘密の舞踏会。
そこには、誰かの“好き”を笑わず、
それぞれが“なりたい自分”を楽しめる、優しい非日常が流れていました。
hakobunenomori
今回のBIZZARRE BANQUET 〜Osaka Fetish Ball〜(通称:BBB)を主催されているしほさんがオーナーを務めるお店です。

住所:〒530-0027 大阪府大阪市北区堂山町16-4 パールレジャービル401
店舗の営業時間、イベントなどは公式Xを参照ください。
hakobunenomori公式X:https://x.com/hakobunenomori
BIZARREBANQUETイベント公式X:https://x.com/osakafetish

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