
ステージの上で、静かに服を脱ぐ。
その一つひとつの動きに、物語のような気配が宿っていました。
広島で活動しているバーレスクパフォーマー「Marimo GABANG(まりもぎゃばん)」さん。
普段は会社員として働きながら、ステージに立つとまったく異なる表情を見せる。
華やかなイメージの強いバーレスクの中で、どこか物語のような静けさを感じる表現が、ずっと印象に残っていました。
今回は、カフェでケーキをいただきながら、ゆっくりとお話を伺いました。
阿寒湖のまりもから生まれた名前

「Marimo GABANG」という名前の由来は、北海道・阿寒湖のまりも。
北海道出身のまりもさんにとって、まりもはどこか身近な存在でもあります。
大きく育ったまりもは、あるとき弾けるように崩れることがあるそうです。
そうした性質が好きで、ご自身を重ねるように、その名前を選んだと話してくれました。
もともと別の活動で使用していた名前にも「まりも」が入っており、その流れをくむかたちで、バーレスクのステージネームとしてヲルガン座オーナーのゴトウイズミさんによって「Marimo GABANG」という名前がつけられました。
やわらかい響きの中に、どこか内側に溜めたものが、ふと外へにじみ出るような気配が残ります。
また、まりもさんはBL同人誌の制作も行う、いわゆる“オタク気質”の持ち主。
物語をつくること、キャラクターを深く掘り下げることは、この頃から自然と身についていたようです。
広島での暮らしと、緊縛との出会い
就職を機に北海道から広島へ。
地元から離れ、周囲に親しい人もいない中で、「大人になってから友人を作るにはどうすればいいのか」と考えるようになります。
料理教室やヨガ教室に通う人が多い中で、まりもさんが選んだのは緊縛教室でした。
この選び方が、なんだかまりもさんらしい。
向かった先は、広島縄会。
そこで出会ったロープアーティストの雨宮蛍さんとは、10年以上の付き合いに。
緊縛を学びながら、受け手として縄を受ける経験も重ねていきます。
蛍先生と呼ぶ姿が印象的でした。
ストリップに触れて見つけたもの
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(画像元:広島経済新聞)リンク:https://hiroshima.keizai.biz/headline/3504
まりもさんにとって、大きな影響を与えたのがストリップでした。
広島の第一劇場に足しげく通い、建物の古びた外観や、その場の空気感も含めて惹かれていきます。
服を脱ぐという行為が、ただの動作ではなく表現として成立していること。
身体そのものが作品になるという感覚に、強く心を動かされたといいます。
話を聞きながら、そのときのまりもさんの目線を想像していました。
ただ観ているのではなく、どこかで“受け取っている”ような感覚だったのではないかと思います。
もともと自分の美しさに自信が持てず、基準に悩むこともあった中で、ストリップという存在は「ありのままで表現していい」という感覚を与えてくれるものでした。
第一劇場が閉館する日。
もう何度も見ているから大丈夫だと思っていたそうです。
それでも、気づけば劇場へ向かっていた。
その日は閉館を惜しむような雨。
多くの第一劇場との別れを惜しむファンが、朝早くから何時間も並んでいた。
満席で立見席もいっぱいだったため、まりもさんが入場することは叶いませんでした。
もう見られない、と実感したときに涙が止まらなくなり、その足で美容院へ行き、髪を切ったと話してくれました。
その一連の出来事を聞きながら、まりもさんにとってストリップは、ひとつの“恋”のような存在だったのかもしれないと感じました。
バーレスクとの出会い

展覧会やショーを観に、もともとヲルガン座へ通っていたまりもさん。
友人がバーレスク部に入ったことをきっかけに、手伝いをするようになり、その流れでオーナーのゴトウイズミさんから声をかけられます。
「やってみない?」
この一言で、バーレスク部への入部を決意。
部では年に2回、新しい演目を制作します。
全体のテーマがあり、その中で自分なりに物語を組み立てていくスタイルです。
ダンスではなく、パフォーマンスとして

まりもさんは、ご自身のことを「ダンサーではなくパフォーマー」と表現します。
ダンスが苦手で、教室に通ったこともあるものの、うまくいかなかった経験があるそうです。
だからこそ、動きそのものではなく、物語性や世界観で見せるスタイルへと自然に向かっていきました。
以前拝見したステージは、とても印象的でした。
芥川龍之介の『河童』『歯車』をもとにした演目で、現実と非現実の境界が曖昧になるような、不思議な世界観。
静かに進んでいくのに、気づくと目が離せなくなる。
あの感覚は、あとからじわじわ残ります。
また、好きなゲームキャラクターになりきって演じていたとのこと。
今回お話を聞くまで、それがキャラクターだと気づかないほど自然に溶け込んでいました。
表現の広がりと、これから

BLストリップを観るのも好きで、自身でも男装してキャラクターになりきる表現にも関心があるそうです。
2023年には栗鳥巣さんとの共演も果たし、活動の幅も広がっています。
バーレスクを始めてから、自分に自信が持てるようになったとも話してくれました。
ありのままでいいと思えるようになったことは、大きな変化だったそうです。
※栗鳥巣さんは、ストリップだけではなく、変態見世物師として各種イベントや劇場、映像作品へ多数出演されている女性パフォーマー。
特にBLストリップでは、今までストリップ劇場へ足を運んだことのない女性を虜にしました。
いつか私もお会いしてみたいです。
創作と、見せるということ

お話の中で印象的だったのが、「快楽」についての考え方です。
NUKITIMESのテーマでもある「真面目に快楽を追求すること」について伺うと、まりもさんは、自分にとっての快楽をとても率直に言葉にしてくれました。
自分にとっての快楽とは、自身の創作という自慰行為を見て、さまざまな感情を受け取ってもらうこと。
その言葉は強いのですが、不思議とまっすぐに聞こえます。
自慰行為を見せつけることは、ひとつの変態行為だと思っている。
それを楽しんで見てくれる人に対しては「ありがとう」という気持ちがあるし、そういう変態プレイだとも捉えているそうです。
また、観ている側がドン引きするかもしれない、という感覚もどこかにありながら、実際にそうした反応が返ってくることも含めて、ひとつの手応えとして受け取っているといいます。
聞いていて、その距離感がとても誠実だと感じました。
自分の中にある感覚が外に出て、何かしらの反応として返ってくる。
その循環の中で、快楽が昇華されていくような感覚があると話してくれました。
一方で、まりもさんとしての“スタイル”を求められる場面も多くあります。
自分が見せたいものと、観る側が見たいと思っているもの。
そのバランスは、いまも模索している最中だといいます。
ステージに立つ以上、お金をいただいている。
だからこそ中途半端なことはできない。
自身の創作という自慰行為と、観客とのセックス。
その境界線の上で表現している、という言葉がとても印象に残りました。
日常とステージ、その両立

これだけ活動されていると、自由業の印象を持たれることも多いそうですが、まりもさんは現在も会社員として働いています。
この話を聞いたとき、少しだけ驚きました。
日常をきちんと送りながら、もうひとつの顔としてステージに立つ。
その距離感もまた、まりもさんらしさのひとつのように感じました。
来世はストリッパーになりたいと語るまりもさん。
今後も写真展やバーレスクの活動を予定されています。
まとめ〜オタク気質が生む、唯一無二の世界観〜

オタク気質ならではの掘り下げや考察、登場人物への愛情、そして細部まで行き届いた解像度。
そうした積み重ねが、まりもぎゃばんさんの表現を、他にはないものにしているのだと感じました。
お話を聞いたあと、もう一度ステージを見てみたくなりました。
きっと同じ演目でも、見え方が少し変わる気がします。
何を見せているのか、どこまでが自分で、どこからが誰かに向けたものなのか。
その境界線を確かめるように、もう一度向き合ってみたいと思いました。
まりもぎゃばん

公式Instagram:https://www.instagram.com/marimogabang/
公式X:https://x.com/marimo_un
2026年5月2,3日に5月2日、3日に廃墟ギャラリーにて、初の写真展開催。
「まりもいんわんだ~ふぉとらんど」
開催時間:11:00-22:00
ショータイム:1日1回15:00-
観覧無料・雨天中止・投げ銭歓迎
撮影会:15:30以降ご要望がありましたら順次承ります。
廃墟ギャラリーにて写真撮影可能。投げ銭制。
廃墟ギャラリー
〒730-0805 広島県広島市中区十日市町1丁目4−32 4F


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